なんと,今回で連載10周年となる双星の陰陽師。
ジャンプスクエア巻頭カラーで50Pの大容量。今回は無悪VS貴人、朱雀、白虎。
大迫力の最終決戦、まさかのキャラの覚醒もあるので最後までお楽しみください。
なお、ジャンプスクエア12月号(2023/11/04)までのネタバレを含みますのでご注意ください。
ちなみに、次号は休載だそうです。
限界を超越して
「僅かだが無悪本体が剥き出しになった‥あの状態ならば陽の気の攻撃でも通用するはずだぁ~~」
「外では焔魔堂が一人で戦ってくれている‥今、今ここであの男を祓えるのは‥!!」
「虫唾が走る」
清弦と有盛が見守る中、再び無悪に立ち向かう12天将たち。
白虎、朱雀。そして貴人。
「往くぞ!!天馬っ!繭良っ!」
「全身全霊を賭してっ‥!己が業を振り払い!信念を刃に!!誇りを盾にっ!」
相変わらず暑苦しい士門は情熱的な台詞を叫びます。
「今こそ限界の限界を超越する時」
「うるせえよ」そんな士門の叫びをかき消すように、天馬は不敵な笑みを浮かべ一人飛び出します。
「ブッ」「殺すッッッ!!」
宙を蹴り、大地をかき鳴らし、凄まじい速度で無悪に躍りかかる天馬。両腕の大剣を無悪に振るいます。幾重にも放たれた斬撃、無悪はそれらをすべて回避します。
陰陽消滅が消えた今、天馬の攻撃を受けるのは如何に穢れの王といえどまずいのでしょうか。
「今度は受けねぇのか?」
「ならば当ててみよ」
「その通りだ」
天馬の猛攻を回避しきった無悪、その背後に金色の翼の陰が迫ります。
12天将朱雀、その紅蓮の拳が無悪に炸裂します。
「畳みかけるぞ─繭良っ!!」
無悪は、王座を高速で移動させ交代します。が、行く手を阻むように繭良の凶爪が無悪に炸裂します。
穢れの王相手に、実力伯仲の戦いを繰広げています。
限界突破
しかし遠巻きで観察していた有盛は不穏な表情を浮かべています。
「確かに効いている‥が、天馬さん達は一度、纏神呪を発動してしまっている。己の限界を超越する纏神呪を二度も‥連続して使うなんて‥!戦闘が長引く程、此方が不利になる‥文字通り命の削り合い!!」
そして、有盛の予感は当たっていたよう。
「─!!‥はっ、あぐ‥!!ふぅっ!ふぅっ!」
「繭‥!?」
身体の限界が来た繭良は、その場に立ち尽くしてしまいます。
それを見た士門にも、限界が訪れたようで、士門も膝をついてしまいます。
「‥もう!?もうなのか‥!!?」
「先に馬脚を表したのは其方たちだったな」
その隙を逃す穢れの王ではない。動けない二人に、無慈悲に拳を振るう。
「私は穢れの王、星ノ命運を握り、永遠の存在たる我こそ、其方らが“神”と崇める者と同等の存在と知るがいい」
刹那、出現した大量の拳が降り注ぎます。が──
その拳は、二人に触れる前に、すべて斬り裂かれます。
「散々偉そうに御託並べたあげく、自分は”神”だと!?恥ずかしい野郎だなぁっ──んん!!?」
貴人の斬撃が、すべて受け止めて見せたのです。
二度目の纏神呪でもまだ余力を残している天馬、流石ですね。
それを見て、更に拳を出現させる穢れの王、凄まじい数の豪腕が天馬に向け降り注がれます。
「此処は人間とケガレの世界だぜ!?神の居場所はねぇんだよっっ!!!!」
しかしその攻撃の中に自ら飛び込んで往く天馬。まさに大胆不敵。
「あの連続攻撃の中を逢えて直進っ‥‥!!!?」その様子を見て有盛は頭を抱えています。
そうして、幾重にも重なり襲いかかる拳の雨を避けきった天馬は、手に携えられた大剣で穢れの王を切り裂きます。天馬の一撃は、穢れの王の座る王座を破壊します。
「鳥丸うううううっ!!!!乳子おおおおおっっ!!!!寝てんのかああああっっ!!!?んん!!!?」
そんな天馬のかけ声に共鳴するように、士門をはじめます。士門の腕には、燃える炎の刃が纏われていました。
金鶿鳥煉獄烈羽!!!!
「巫山戯るなっ‥!!つい先刻まで、敵戦力に圧倒されていたのは何処の誰だっっ!!!?」
ここまでの歩みのすべてを出し切るときは──”今”!!最大の試練にして最高の高ぶりが目の前にあるっっ!!!!
更に体勢を整え直した繭良も士門の横に並び立ちます。
「此処で貴方を祓えば、全部が終わるっっ!!!!」
二人は同時に飛び出します。
『同時に!!!』
そして、一撃、穢れの王を炎の刃と白虎の大爪が切り裂きます。
更に一撃、一撃、一撃‥!!
吹き飛ばした穢れの王を先回りするかのように、阿吽の呼吸で噛み合った二人の連撃が穢れの王を着実に追い詰めてゆきます。
それらは速すぎて、穢れの王が分身とも見紛うほど
「分身─ではない、呪力を置き去りにするほどの超スピード‥─これは質量を持った残像っ!!」
穢れの王は吐血しながら、ただ攻撃を受けるのみ、それしか許されない状況まで追い詰められます。
「私たち人間は弱いから、隣の人を護るだけで一生懸命なの‥エゴで塗れた貴方の造る悲劇に構ってる余裕なんて無いっっ‥」
「あなたは、貴方のいた世界に帰ってよ!!!?──このお涙ちょうだい三文コンサルタントぉぉぉぉっ!!!!」
例の如く、繭良ワールドの謎ワードに士門と有盛は困惑し、穢れの王は大きく仰け反り、天馬は目を細めていますが‥
その表情を見て清弦は「いい面構えだぁ~~」と評すのでした。
略奪者
次の瞬間、無悪に張り付いていた穢れの王の黒い霧が外へと放出され始めました。
「無悪を覆っていた穢れの王の‥陰陽消滅の力が逆噴射している‥‥!?」
「なんと‥往生際のっ‥悪いっ‥!今更其方が出てきたところで何が出来るのだ?」
徐々に、徐々に穢れの王の黒い霧が無悪の身体から剥がれていきます。そしてここに来て穢れの王に焦りが見え始めました。
「‥黙れ、穢れの王の力は小生のものとなるのだ‥‼」
「無悪!!?」
「おっおおおっ‥おおおおおおおおおおおおお」
雄叫びを上げて、穢れの王の支配に抗う無悪。そして、辺りに白い結晶の塊が現れたのでした。
「呪力が‥結晶化した‥!?」
穢れの王の黒い霧を結晶化させたのでしょうか。穢れの王から肉体の支配権を取り戻した無悪は結晶を身に纏い不敵に笑います。
「貴人の言う事にも一理ある。神の居場所は此処にはない‥この星は、ケガレのものだ!」
白い肌に太陰のような大きくて禍々しい二本の角。双星と同じ形状の、黒と白の豪腕。
胸には陰陽消滅を表す文様が刻まれています。
その様相を見た天馬は、石鏡悠斗の白い玄態を思い出し舌打ち。
「あの見た目は‥野郎っ‥巫山戯やがって‥!!」
再び陰陽消滅の力を取り戻した無悪は、禍野に漂う呪力をどんどん結晶に変えてゆきます。
「周囲に物質が無悪に吸い込まれている‥!?いや、‥これは‥陽の気で出来た翼が‥分解されていくっ‥!!」
いや、影響を受けたのは禍野だけではないよう‥士門の金色の翼や紅蓮の鉤爪が分解され始めたのです。
「しゅ‥呪力が解けて‥融合しようとしている‥!!?」
「‥な‥何をするつもりなんだ無悪!!」
「愚問だな、土御門有馬の子よ。我が野心はケガレの世界の創成のみ。太陽の欠片が我が身から失われたために一度潰えた我が目論見──図らずも再び”陰陽消滅”が小生の元に帰ってきた。最期の手段は小生が外道・泰山府君と成って、穢れの王を祓う!!」
「邪魔はしないで貰おう」
無悪が掌印を結ぶと、無悪の周りの結晶が更に大きくなり‥
「結晶化した呪力が‥更に、デカく増えやがった‥!!」
「自らを周囲の陰の気諸とも‥融合しようとしている‥!?」
「ここまで追い詰めたのに、また“陰陽消滅”の姿に戻るなんて‥」
「面倒くせぇことしやがって‥!!」
「もう、戦うための呪力が‥」
そうしている間にも、無悪は周囲を取り込み呪力量を増やしていきます、もはや万事休す。
そんなとき、有盛の脳裏に有盛を呼ぶ声が響きました。
「鈩さん!?」
「おさらばで御座います!!先に申しましたでしょう?地獄に落ちる時はこの鈩のみ。誉れ高き土御門の後継とほんの一時でも共に戦えて光栄で御座いました。とくとご覧あれ!騰蛇・鈩。一世一代の術式に御座いまする!!」
霊体となった鈩は、無悪の懐に躍りかかります。
「心地の良い邪気だなぁ」
「!?」
「地獄の業火を吹き上げる詩の呪いの踏鞴、罷り越して候!!」
「この‥死に損ないめ‥‥!!」
そうして鈩は無悪の頭蓋に手を伸します。
霊体である鈩に触れることの出来ない無悪は、悔しそうに歯ぎしりするのみ
「君主のために生き、君主のために死ぬるが我が約定!!
己の命を燃やし尽くすことで可能とする騰蛇が最期の呪い、受け取るがよいっっ!!!!」
次の瞬間、辺り一体を薙ぎ払うほどの突風と共に、大きな爆発が発生するのでした。
やはり、ここの辺り、鈩の最期はアニメと同じ、自爆技でしたね。
覚醒
突如発生した大爆発にあっけにとられていた天馬。
その大爆発を受け、天馬は左腕の大剣は消失してしまったようで、纏神呪は解けていませんが左腕は肩から下がなくなっていました。
そんな天馬の耳に、無悪の呻き声が届きます。
「屍っ‥如き‥が‥!!だが‥耐えたっ‥‥ぞ!!」
無悪の身体は大爆発を受け、首から下の殆どを失っていました。しかし、頭部は無事のようです。
更にいえば、辺りの呪力を吸収し、徐々に身体が回復しているようにも見えます。
そんな無悪を見て、天馬は立ち上がり無悪の元へとどめを刺しに向かおうとします。
その様子を後方で見ていた繭良と士門。二人の身体は既に限界のようで、地面に座り込んでいました。
しかし天馬の雄姿を見て、再び立ち上がります。
「陰陽消滅が乱れたっ‥!!あの男を祓うのは今をおいて他にないっ‥無悪を討て‥天馬っ‥!!」
「お願いしますっ‥私たちの呪力を‥託しますっ‥!!」
「‥‥!?」
二人は天馬の背中に手を当て、呪力を渡したのです。
そんな中、天馬の脳裏に女性の声が響き渡ります。それはかつてのトラウマ。
「あ~あ、可哀想に♡」
その声に天馬は目を見開きます。
「最期に頼るのがあんたしかないなんて。本当は誰よりも臆病で寂しがり屋なのにねぇ~~~?」
「‥あんたはいつも、俺が後ろ向きの時に出てきやがるな‥」
「当然でしょう?私はあんたの中にある”恐怖”。あんた自身が自分に書けた呪いそのもの、逃げることは出来ない」
恐怖‥呪い‥‥?
その時、天馬の中に一つの疑問が生じます。
確かに一時期は己れの罪悪感から、ずっと逃げたいと思っていた、死んで呪いから解放されることをのぞんでいた。
「陽」のものが正しいとして、「陰」のものが悪いものだとするならば‥どうして‥
どうしてアイツらは一緒にいるんだ──?
だったら何故、太陽と太陰が一緒にいるんだ?
そう。正しい者と悪い者が一緒にいるのは何故だ?何故共存できているのだ?
「そうか‥それも悪くねぇな‥」
「はぁ?」
「俺のケツを蹴ってくれるのは泉里お姉ちゃんだけだなぁ。ありがとう、いつも一緒にいてくれて」
「な‥‥何言ってんの?」
己れの中に在る恐怖は‥克服するのではなく内包する。なんだ‥認めちまうと、存外気楽なもんだ。
有盛、清弦、有馬に鈩、ろくろと紅緒。
天馬は「ありがとう」と感謝を零します。
再び、場面は現実へ。
もうそこには、泉里の姿はないようです。
自らに呪力を流す士門と繭良に「‥退がってろ、お前ら」と呟きます。
「ありがとよ、後は任せとけ」
一人無悪の前に佇む天馬。
纏神呪の状態で、右腕には貴赫人機の大剣が握られています。普段の大剣を装着した状態ではなく、貴赫人機の剣を持っている状態。
無悪を祓うには、強い、纏神呪よりも強力な力が必要です。
天馬は深く息を吸い込み「スゥー」と吐き出すことを繰り返して呪力を練り上げます。
「スゥー」「スゥー」幾度となく繰り返していきます。
「呪力は心。こうありたい、こうなって欲しい、願いを実現する力」
「先ずはじめに太極あり、そには陰も陽もなく、森羅万象、全てはひとつ。カタチはなく、混ざり合う、宇宙を揺蕩う素。ただ其処に在る」
突如、天馬から眩い光が放たれ、その姿を変えます。
大きな光の大剣を握る、美しい少年。身体には痛々しい血の跡が残っていますが、それでも神々しい。
束ねられた髪はほどけ、頭部には神鹿を思わす大きな一角が。胸には五芒星が刻まれています。その姿はろくろや太陽の御霊にどこか似ていて‥しかし胸に刻まれている五芒星の種類は違う。
まさに神の領域に到達した姿。巫女に近い存在なのかも知れません。この辺りは後に考察します。
その姿と成った天馬は無悪と対峙ます。既に失った部位を半分以上再生した無悪。そんな無悪ですが、天馬の異様な気配に、驚きます。
「貴人っ‥─!?」
その姿を見た無悪は、咄嗟に黒い呪力を腕に集め、天馬に狙いを定めます。それは、石鏡悠斗と同じ黒い波動です。
しかし
「貴人の身体が‥霞む‥!?」
狙いが定まりません。というか、天馬の存在を認知できていない‥のほうが正しいでしょうか。
「天馬‥至ったのか‥!?」
ゆらっ、陽炎の如く揺れる天馬の存在を前に、無悪は何も抵抗など出来ません。
天馬は腕に構えた大剣を構えると、一閃。振り下ろします。
キン。
細い斬撃が静かに無悪の身体を両断しました。
「ぐぬっ‥!?」
「これが‥陰陽師の神呪!!」
過去の記憶
「呪力が‥溶けて流れる‥」
天馬に身体を切り裂かれた無悪。その身体は徐々に崩壊していきます。
死にゆく刹那、脳裏を過るのは遙か昔の走馬灯でした。
それはかつて婆娑羅と成る前の無悪と、千怒のやり取り。
「休め、もう休め無悪‥」
「戯れ言を言うな、戦の神髄はこれ。どちらかが滅ぶまで続けることにある」
「──じゃが、選ぶことは出来るはずじゃ。儂らには、戦わないという選択肢もある」
そして婆娑羅へと成った無悪と千怒。
ボロボロな浴衣を着た二人は穏やかな表情を浮かべた無悪と千怒は在る場所に足を運びます。
「ここに村を造ろう」
考察
天馬について
天馬の成ったあの姿は作中で”陰陽師の神呪”と呼ばれました。その姿はどこかろくろに似ている気がするのですが、胸に宿った文様は少し違います。
ろくろや太陽の御霊の文様は、単純な五芒星。しかし天馬の胸に宿った呪印は、五芒星だけではなくその周りには魔法陣のようなものが刻まれていました。
また無悪の陰陽消滅を表す文様(勾玉)や紅緒やケガレに刻まれている九字とも違います。
新しい形態と言われればそれまでなのですが、ここではなるべく既存の知識だけで考えていきます。
太陽と太陰の力を内包した状態、つまり巫女に近い存在では?というのが私の考察です。
天馬は貴人を継承した際、紅緒が太陰に覚醒したときと同じ文様が浮かび上がっていたのを覚えていますでしょうか?その際に、天馬の身体には実は九字が浮かび上がっていたのです。
天馬は歴代太陰を呪護者に持つ陰陽師でありながら、生まれ持って12天将並の呪力を持つ存在です。
そんな天馬が自らの中にある呪い(陰)と感謝(陽)に気がついたのが、あの泉里とのやり取りなのかなと個人的には考えています。
もしかすればその時に天馬は覚醒し、太陰の呪力を手に入れた、或いは認知した。
更に天馬は士門や繭良の呪力も得て、天馬自身の呪力と同化したことで、自力で太陽に匹敵する呪力を手に入れた。
以前、無悪はろくろを見て、『小生の呪力よりも太陽の呪力の方が数段も上回っている』と評していましたが、このことから呪力には量だけでなく質があるのだと考えられます。あの深呼吸の場面は呪力の質を上げていたのかも知れません。
そうして太陰の呪力とそれに匹敵する陽の呪力を得た天馬は、巫女に近い存在”神呪”になった‥というのが最終的な考察です。
神に近い存在だったため、無悪が認知できなかった‥というのは一応個人的には納得しています。
またその状態の天馬は、恐らく現状最強或いは最強クラスです。
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